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書籍紹介

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2021年10・11月

新刊

小学校教師のためのやってはいけない英語の授業

菅 正隆|144ページ|1,760円
ぎょうせい(2021年9月)

 小学校における英語教育は2008年に日本で初めて学習指導要領に取り入れられ、2020年度から中学年で「外国語活動」が高学年で「外国語」が実施されている。この本の著者は文部科学省の教科調査官として、導入時から現在に至るまで全国各地で授業を見学し、小学校の教師や指導主事などから話を聞く中で、日々の授業で苦悩する教師が無理、無駄の多い授業実践を行なっていることを知った。そしてその結果、小学校英語が中学校英語の前倒しとなり、子どもたちの「英語ができない」「英語が嫌い」の気持ちを増幅させていると感じたことから、英語運用能力の向上のために指導、評価方法を見直すための改善策としてこの本を執筆した。
 本書は大きく分けると3部から構成されている。1部はやってはいけない指導編で、現場で教師が「当たり前のこと」としてよく行なっている指導(例えば、フォニックスを取り入れる、ステッカーでやる気をアップさせる)だが実は英語嫌いの子供たちを増やす原因になる可能性があったり、それほど英語力向上に役に立ってないものを20ケースに分けて詳細に解説している。そして、なぜダメなのかの説明で終わるのではなく、具体的で詳細な改善策(やるべき授業の秘策)も解説している。2部はやってはいけない評価・テスト編で1部と同じようにまず、ダメな評価やテスト(例えば、指導書通りの年間指導計画や評価は行動観察で行うなど)を5つのケースに分けて取り上げて、その後に「誰のため」「何のため」に評価をするのかという観点で改善策を提示している。最後の3部はやってはいけない教師・研修編で、教師自身の英語力を高める必要とその方法、英語授業への取り組みに対して消極的な管理職がいる現場での対策法が具体的に書かれている。
 1から3部全てでイラストを使い、英語教育の専門用語を使わずに書かれているので、分かりやすい内容になっている。また、この本のタイトルにあるように小学校の教師を対象に書かれているが、中学校英語の授業での活動にも通じるところが多くあり、中学校の英語の先生や現在英語教師を目指している学生にも参考になる、おすすめの本である。 
(文責:松尾 徹)

2021年6・7月

新刊

『TRICK』スティーブ・ジョブズを教え You Tube CEOを育てた シリコンバレーのゴッドマザーによる世界一の教育法

エスター・ウォジスキー 訳者:関 美和|393ページ|1,800+税円
文芸春秋(2021年4月)

 著者のエスター・ウォジスキーは、イノベーションの聖地シリコンバレーでは大変著名な高校教師である。ユダヤ人移民である両親の元で、幼少時は貧困に苦しみ、女性に教育は必要ないと言われて育てられた。
 大学を卒業後ジャーナリズムの世界に入り、その後長年地元の公立高校で教鞭をとり、ジャーナリズムを授業に取り入れ、多くの優秀な人材を育て世に送り出した。
 自ら育てた3人の娘は、You TubeのCEO・カリフォルニア大学医学部准教授・バイオベンチャー23andMeのCEOと素晴らしいキャリアである。エスターは、子育てにおいても高校教育においても、『TRICK』という理論を大切にすべきだと説く。Trust(信頼)、Respect(尊重)、Independence(自立)、Collaboration(協力)、Kindness(優しさ)を大切にすることで、苦しいときに頑張れる、他者とのコミュニケーションを大切にし、自立した一人の人間として人生を豊かに楽しむことができるというわけである。
 前半は自らの半生を振り返り、子ども時代に苦しめられた価値観を自分の子どもに押し付けることは絶対に避けようと決めたことなどが述べられている。
後半は、高校での教育においてTRICKのメソッドを使い、その授業を受けた生徒達が次第に成長し、最後には教育委員の悪事を暴き、辞任に追い込むという内容は痛快である。
 400ページ近い量を一気に読み終えて、私自身も3人の子どもを育てた経験や、高校教諭であったことを思い出しながら、ある種の爽快感を覚えた。
 このTRICKの価値観は、大阪女学院の学びと重なる部分が非常に多いと思う。加藤映子学長が総合キャンパスプログラム演習等でしばしば述べておられるが、「思ったことをしっかり伝える」、「仲間と共に学ぶ」、「やり抜く力を身につける」ということがまさしくそれである。これから教職をめざす学生の皆さんには、世界一の教育法と言われる理念と大阪女学院の教育理念は驚くほど似通っていることを理解してほしい。ご一読をお勧めしたい。
(文責:富永 誠)

2021年4・5月

旧刊

『教育効果を可視化する学習科学』

ジョン・ハッティ、グレゴリー・イエ―ツ著 原田信之 訳者代表|552ページ|5400+税円
北大路書房(2020年8月)

 本書はジョン・ハッティ、グレゴリー・イエーツ共著のVisible Learning and the Science of How We Learnの邦訳本である。本書は、学習理論の構築や難解な認知心理学に関する専門書ではない。膨大なデータをメタ分析し、「学習を可視化すること」を目的としている。すなわち、教師と生徒が効果的な学びのためにすべきことを説いているのである。本書は3部構成「学級内での学び」、「学びの基礎」、「自身を知ろう」から成り、さらに各章は著者が示唆した展望で締めくくられ、新たな研究課題を投げかけている。
 第1部の「学級内での学び」においては、教師のフィードバックの影響や生徒間との信頼関係について言及している。熟達した教師における専門的技能の開発、天賦の才能の成人期への影響や発達などを取り上げ、指導領域で生じる問題に焦点を当てている。
 第2部の「学びの基礎」においては、知識獲得について論じている。そして、記憶保持、生徒の学習スタイル、情報過多などの概念に理解を促している。特に、宣言的知識(declarative knowledge)を感覚的認識、手続き的知識(procedural knowledge)を実際の技能・経験と区別している。さらに、記憶術の訓練をも論じ、表面的に学ぶことは可能であっても、必ずしも深い側面を高めることには役立たないと主張している。
 第3部の「自信を知ろう」では、自尊感情、自己効力感、自己肯定などで問われる「自分に対する評価」を中心に議論が展開する。これらは微妙に異なるが、「生徒の潜在能力を最大限発揮させるように教師は努めるべきである」という考察が共通に見受けられる。生徒の「自尊感情」のみが上昇しても、必ずしも成績向上が付随するわけではない。生徒に「自信を持たせる」ことが教師に求められる。それゆえ、誇大な自尊感情にとどまらないように、高度で有意義な課題を提供することが必要となる。
 本書は、教師の指導や生徒の意欲向上を目指す際の手がかりとなろう。フィードバック研究において、著名なハッティの他の論文から得る知見をも参考としていただきたい。
(文責 仲川浩世)

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