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書籍紹介

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2019年1月

新刊

読書する人だけがたどり着ける場所

齋藤 孝|192ページ|864円
SB新書(2019年1月)

漠然としていた変化が新たな定義と推進力を与えられる新年である。2019年は「キャッシュレス元年」「5G(第5世代)元年」などと言われ、人間の感覚や経験のデジタル情報化が一層進み、しかもその情報処理が法外な速度で実現可能になる。もはやAI社会は近未来の物語ではなく、現実の時空である。そんな中、本書のタイトルが目に留まった。読書の大切さを説くことに目新しさはないが、それによってたどり着ける空間を筆者はどのように書いているのだろう。直観的に、デジタル化された時空と対局にあるholisticでtimelessな空間を想像し、タイトルに心が和んだ。

 著者は大学で教鞭をとる教育学者。教育学、身体論、コミュニケーション論などを専門分野として、『声に出して読みたい日本語』などベストセラーを多く執筆している。近刊『大人の語彙力ノート」は昨年来、好評を博している。

 本書は、序章「なぜ、いま本を読むのか」にはじまって、知識を「深める」だけではなく、思考力や人格、人生を「深める」本の読み方を軽やかに説いている。「たどり着ける場所」とはその深められた空間を指すのであり、それぞれの読者にとって唯一無二の空間となるのであろう。各章で、何冊かの名著が推奨されているのもいい。アナログな空間にいざなってくれる1冊である。 (文責 東條 加寿子)

2018年12月

旧刊

「帰還せず」-残留日本兵60年目の証言-

青沼陽一郎|333ページ|1,700円
新潮社(2006年7月)

 本書は東アジアに派遣された日本兵のうち、様々な事情によって終戦後日本に帰還しなかった14名のインタビューを基にしたルポタージュである。買ったものの読まずに10年が過ぎた。私の父も召集され、軽騎兵(軽武装で偵察や奇襲、追撃が主な業務)として中国武漢からフィリッピンへと転戦した。しかし急遽本土に呼び戻される。アメリカ軍による東京空襲が始まり、陸軍は電気工学、電波工学を学んだ兵を東京都の市ヶ谷に集めたのである。父は召集される前、夜間の工業学校で電気工学を学び、召集後は通信兵としての訓練も受けていた。そして東京で終戦を迎えた。帰還しなかった人達、命令で帰還した父、そんな勝手な対極的な思いがあったから読まずにいたのかもしれない。

 本書の読みどころは、14名それぞれ違う状況が違うことにある。インパール作戦に参加した人、インドネシア独立戦争に参加した人、温存された部隊にいたため一度も戦わずに終戦を迎えた人、一度帰国したものの自分の墓があり兄弟から「なぜ帰ってきたのか」と問われた人等・・・、そんな元日本兵を受け入れた東アジアの人達の暖かさ、平和の大切さを再認識させられずにはおかない。元日本兵と結婚したタイ人女性が「人間は愛する人が多い方がいいでしょ。憎んでいる人が多い方よりずっといいでしょ」と語る。その言葉が染み渡る。(文責 森均)

2018年11月

新刊

『教育のなかのマイノリティを語る』

前川喜平|276ページ|1,500円
明石書店(2018年9月)

昨年から今年にかけてモリカケ問題で名前が知れ渡った人物の名前が大きく表紙にあ ったので、どんなんかな~と購入した。

本書の宣伝には「学校や教室で、マイノリティの子ども・生徒の生きづらさに共感 し、どうかかわっていけばいいか。日本の学校文化のなかで見過ごされてきたマイノリ ティ問題にとりくんできた現場の教員と長く教育行政にかかわってきた元文科省幹部職員が現状の問題点とこれからの課題を縦横に語りあう」とあるが、いずれのテーマも読み応えがあって興味深い。秋にお勧めの一冊である。

   部分タイトル

 ・高校中退 学習言語を習得できない子どもたち / 青砥恭, 前川喜平

 ・夜間中学 歴史・意義・課題 / 関本保孝, 前川喜平

 ・外国につながる子ども「いいものがいっぱい」ある多文化教育 / 善元幸夫, 前川喜平

 ・LGBT マイノリティの生きやすさとは / 金井景子, 前川喜平

 ・沖縄の歴史教育 平和教育をつくりかえる視点 / 新城俊昭, 前川喜平

(文責 中垣芳隆)

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