


文部科学省が公表した小中高等学校を通じた英語教育改革を計画的に進めるための「英語教育改革実施計画」(平成25年12月)、英語教育の在り方に関する有識者会議が報告した~グローバル化に対応した英語教育改革の5つの提言~(平成26年9月)などを踏まえ、次期学習指導要領案の英語教育改革構想が検討されている。校種ごとにおける主な教育目標は、
としており、小・中・高の各段階を通じて英語教育を充実させ、生徒の英語力向上目標を高校卒業段階で英検2級~準1級、 TOEFL iBT57点程度以上等に設定している。今後、中央教育審議会での検討を経て学習指導要領を改訂し、2018年度から段階的に先行実施し、東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせて2020年度から全面実施するとしている。
中学校や高等学校においては、ディスカッションやディベート(を取り入れた)授業が求められる。絵に描いた餅に終わらないだろうかと危惧する。というのも、中学校・高等学校の英語教員の英語力は国が想定しているレベルには達していない。全国の公立中学・高校の英語科教員で英検準1級以上に相当する資格を持っているのは、2014年度調査では中学で28.8%(目標50%)、高校で55.4%(目標75%)だった。
こうした実態に対する対策として、日本経済新聞朝刊(平成28年1月6日)によると、『高校や中学の英語教員の語学力を高めるため、文部科学省は早ければ2018 年度から、全国約400の大学で基礎的な授業内容を共通化する方針を決めた。「話す」「書く」力を強化することに重点を置き、英語で討論するディベートの授業や、自らの考えを英語で表現する授業を大幅に増やす。』とある。そこで、教員免許状を取得できる大学の学部・学科で、共通して学ぶ基礎的な授業内容を「コアカリキュラム」として定め、たとえば、「話す力の強化策の一つとして、時事的な話題に関して肯定・否定に分かれて討論するディベートの授業を増やす。中高生の授業でディベートを実施できるよう、模擬授業の必修化」を検討しいている。生徒の英語力の向上だけでなく、英語科教員の英語力の向上を英語教育改善計画の重要課題とし、大学における教職課程の改善を求めている。他の教科科目に関してはこのような改善策はあまり聞かないが、英語教育にはつねに教員の能力についてその向上が求められている。もちろん、確かな英語力は英語科教員の必須能力である。しかしながら、英語教育はそれだけに留まらない。「心を開く教材 」として学習者の内面に入り込む教材・体験的教材、学習者の個性を引き出す「創造性ある教材」、学習者の未知の事項を扱う「好奇心を旺盛にする教材」、温かい人間関係を築く「感情的にいい気分にさせる教材」を開発作成する能力なども大切である。本学では、英語力の増強と共にそうした教員としての資質・能力の育成も図りたい。
教員養成センター長 中井 弘一
■実践記録
■自由論考(授業研究ノート)