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英語教育リレー随想

更新日:2020年2月19日

産業用半導体メーカーにて-改善提案システムの経験

森 均

大学院修士課程を修了し、教員を希望していましたが生活のため助教授の紹介で産業用半導体メーカーに就職しました。
 入社すると新入社員教育が始まり、座学が終わると3ヶ月間の製造現場での実習に移ったのですが、日誌を書くことを命じられました。日誌といってもノートではなく、廃紙(コンピュータのプリンタで打ち出した紙の裏面を利用)が20枚ほどホッチキスで綴じられたものを渡されました。書く内容は実習内容の感想だけでなく、必ず改善提案も毎日書くことを求められました。
 翌日の朝から始業時に日誌を提出すると、昼過ぎには主任、係長、課長、工場長の判子が押されて戻ってきます。毎日、改善点を1つ提案することはなかなか苦痛でした。毎朝、出勤途中に昨日の作業を思い出しては、こうした方がコストダウンになるとか、時間を短縮できるとか図入りで書いていました。
 提案したことはおおむね実践されていきます。このメーカーでは、月に一度、全社員が業務の改善提案書を1枚は提出することになっていました。提案した内容は幹部が審査し等級が付けられます。一番下は8級で500円、7級は800円、6級は1000円・・・、1級は50万円でした。各係ではその報奨金をプールしておき、飲み会の資金に充てていました。飲み会のことはさておき、このメーカーでは同じ失敗を繰り返すことを避けようという風土が強くありました。同じ失敗を繰り返すことは信用を失いかねないという認識だけでなく、教訓を活かしていないことが重大視されていたと思います。
 振り返ってみますと学校でも教育委員会事務局でも業務の改善についてこのメーカーほど真剣に取り組んでいたとは思えません。担当が代われば一からのスタートになることが多く、前任者と同じ失敗をしてしまい、そのツケは結局生徒達に及びます。
 高等学校では、水際で校長、教頭、事務長らが対応していると言えば大げさかもしれませんが、特別支援学校では少し違っていました。障がいのある子供達への対応を誤れば、健康を害するおそれだけでなく生命をも危険にさらすおそれがあるからです。教員達はヒヤリとしたことハッとしたことをまとめて、ヒアリ・ハット集を作成し情報を共有していました。しかし、学校経営に関しては高等学校と大きな違いはなかったと思います。学校経営・運営、行事のあり方・進め方、学年や学級経営についても改善の提案制度やヒヤリ・ハット集の作成が必要ではないかと思います。
 ちなみに、他の新入社員は1ヶ月間で日誌の提出は終わりましたが、なぜか私だけ3ヶ月間続きました。そのことは知らずにいましたが、実習が終了した際に工場長からそのことを明かされ「君の日誌を読むのが楽しみだった」とも言われたことを思い出します。この3ヶ月間の経験は教員になってからも知らず知らずのうちに何事も一度は自分なりに見直し、不完全であっても改善点をメモし次回に備える習慣となっていったように思います。

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