大阪女学院の環境・学びを支える「ウヰルミナの森」

「街中にこんなに緑いっぱいの学校があるんですね」そんな驚きの声が、大阪女学院を訪れる受験生や保護者、来客、業者の方々からもよく聞かれます。この緑あふれるキャンパスは、学院のルーツの1つである大阪一致女学校が1888(明治21)年にこの地に移ってきて以来の長い年月の間、戦災の苦難も乗り越えて多くの人々の手によりかたちづくられ、現在の姿があります。

花と緑の豊かな校庭

大阪女学院は、戦前、ウヰルミナ女学校の時代から、花と緑を愛する学校であったようです。大正から昭和初期の卒業生が残した思い出の文章には、柿、桜、 柳、榎、泰山木、木蓮、椿、藤、バラ、…等々、幾種類もの木々や花の名を挙げながら、風景画を描くように校庭の美しさを綴ったものが少なくありません。
そんな校庭は、第二次世界大戦下の1945(昭和20)年6月1日、空襲で焦土と化しました。全てを焼失した中から、文字通り手作業によって、校地復興と校庭の緑化が進められました。
なかには戦災を生き延びた木もあります。校歌にも歌われている、図書館前にある「榎」は、学校がこの地に移った時に既に大きく茂っており、空襲をくぐり抜けました。ヘールチャペル南側にある「泰山木」は、無惨に焼け焦げて枯れたと思われましたが、翌年には新芽を吹き出しました。
時間をかけて先達が苦労して植えた樹々が成長し、こんもり緑生い繁る庭となった校庭は、かかわる人みなが心をこめて整備を続け、大切に守り育てられています。
現在は営繕職員が毎日校庭の手入れをしています。ある職員は、校内の木や花を学生・生徒にもっと身近に感じてもらおうと、名前、科名、原産地、関連の和歌なども記した札を付け、それをまとめた冊子も作りました。
いろいろな小動物の姿も心和ませてくれます。訪れる野鳥の種類も多く、正門南側の噴水池ではカメがのんびり過ごし、この池で生まれ育った小魚をねらうアオサギがじっと立っているのも時折見られます。
噴水池は創立80周年記念に生徒・教職員共同作業によって作られたものですが、2009年には125周年記念事業として、池の周囲にウッドデッキを配し、小さな清流を設置して、水辺環境をリニューアルしました。学生・生徒たちが、忙しい学校生活の中で休息し、活動に向かう心の備えの場として活用できるように願っています。

聖句を掲げたアーチ

正門と南門のアーチは、創立110周年記念事業の1つとして設置されました。聖書の言葉よりとられた、葡萄の葉と果実のモチーフが配され、イースターの花 とされている百合もデザインされています。アーチ外側にはラテン語、内側には英語で聖書の言葉が記されており、正門は「主を畏れることは知恵の初め」(詩 編111:10)、南門は「真理はあなたたちを自由にする」(ヨハネ8:32)となっています。

施設整備と安全管理

校舎等の施設設備の整備や安全管理についても、学院全体で環境を整える努力をすすめています。
近年は学校の安全管理が厳しく問われる時代です。正門・南門には保安員室を設けて、校内への出入管理を徹底するようになりました。校地の周りは侵入防止のフェンスを廻らし、外灯、監視カメラ、警戒照明、などを設置しています。

受賞暦

大阪府施設緑化賞(緑の景観賞)最優秀賞(1992年)

これからの施設緑化のモデルとなる優れた施設について表彰されるもので、大阪女学院は「校庭緑化のみにとどまらず地域における緑の景観にも寄与し、沿道緑化へ貢献しており、正門からの前庭や各建物間なども特色ある緑化がなされている」と評価を受けました。

大阪都市景観建築賞(大阪まちなみ賞)・特別賞受賞(2007年)

周辺環境の向上に資し、かつ景観上優れた建物やまちなみについて、特に優れたものを表彰するものです。「長い歴史の中でキャンパスの整備が継続され、古い校舎は周到な意匠計画に基づく耐震補強で甦り、周辺の街並みと一体となって豊かな教育環境を形成している」と評価されました。

BELCA賞受賞(ロングライフ部門)

2004年にヘールチャペルと高校北校舎が、BELCA賞のロングライフ部門で表彰されました。BELCA賞は、国で初の既存建築物の総合的表彰制度で、適切な維持保全や優れた改修を実施した既存の建築物のうち、特に優秀なものが表彰されるものです。
第二次世界大戦下の空襲による校舎焼失の後、内外から寄付も得て校舎再建が進められ、ヘールチャペルと高校北校舎は1951年に相次いで竣工しました。戦後大阪での初期の本格的コンクリート建築です。
当時復興の希望に輝いた建物も、50年が過ぎて老朽化の問題や大地震への対策が必要になり、2000年に高校北校舎、2001年にチャペルの耐震補強工 事を行いました。建築当初の設計デザインを尊重して、新手法により耐震補強がされています。BELCA賞受賞には「設計業者・施工業者・大阪女学院が3者一体となって点検・維持・修繕が丁寧に続けられた」点が高く評価されました。