急がれる部活動の地域移行
富永 誠
更新日:2022年8月3日

 長時間労働が原因で適応障害を発症し、休職を余儀なくされた大阪府立高校の現職教諭が、府に損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁が府に約230万円の支払いを命じた。判決を受けて、最終的に知事が控訴しないことを表明し、大阪地裁判決が確定した。
 この教諭は勤務した高校で、クラス担任、ラグビー部や卓球部の顧問、生徒のオーストラリアへの語学研修の委員長も任されたという。
 報道では、語学研修の委員長の業務がかなり負担であったととれるが、長時間勤務という面から考えると、部活動の顧問の負担が大きかったのではないだろうか。平日は授業準備や会議等に追われ、その後遅くまで部活動の付き添いをする。更に土曜日曜祝日も試合や発表会等で会場や他校へ出向かなければならない。リフレッシュできるはずの休日もないとなれば、精神的に追い詰められてくるのは当然であろう。このケースは高等学校であるが、中学校の現場は更に厳しい。生徒数の減少に伴い教員数も少なくなり、顧問のなり手不足が常態化している。指導経験のない教員が顧問を引き受け、平日も休日もずっと付き添いをしているのが現状である。
 スポーツ庁の有識者会議が。2025年度末までに公立中学校の休日の運動部活動を地域に移行させる提言案を示した。文化部についても文化庁が運動部同様に検討を進めているところである。指導者の不足や活動場所の確保、地域間の格差、保護者の費用負担等、課題は山積しているが、対応を急がなければならない。
 学校の部活動に対する生徒や保護者の期待は非常に大きなものがある。これまでは教員の献身的な取り組みの下で成立してきたが、もはや限界であろう。部を統廃合して整理したり、他校との合同チームを検討したり、部活顧問の日直当番制を導入したりと、さまざまな解決策が図られたが抜本的な解決には至っていない。
 前述の判決に対し、学校側、府側にも異議はあろうが、それを争うことによって現在の学校現場のブラック状態が解消されるわけではなく、むしろ裁判が長期化することで、現職の若手教員やこれから教員をめざそうとする人たちのモチベーションを低下させることにつながりかねないと考えると、当然の判断であろう。
 学校は児童生徒がこれからの社会を生き抜いていくための力をつける場である。常に前向きに明るく学校生活を送ってほしい。先生が笑顔にならなければ子どもたちが笑顔になるはずがない。今回の判決を真摯に受け止め、文部科学省や教育委員会は早急に解決策を講じ、学校現場も業務の精選や効率化を更に進めていく必要がある。

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