最初の分掌経験は保健部 -教員集団・生徒達に助けられ-

森 均
更新日:2024年3月6日

 前回(第137号 2023年2・3月では)、「教員のキャリア発達のもとは?」と題して、教員の様々な生き方に触れた。今回は初めての分掌経験について述べたい。
 私は、半年間の雇用である期限付き講師として教員生活のスタートを切った。所属分掌は着任前に決められていて保健部だった。年度の最後に赴任が決まる者に選択肢はない。年明け前から次年度の体制を考えなければならない学校として仕方がないことである。当時そんなことに気づきもしなかったが、私のような4月1日採用の講師も教員採用試験に合格した人も正式に赴任校が決まるのは3月末なので、両者の状況に変わりはない。
 さて、4月当初の職員会議後、保健部に配属が決まった教員が保健室に集まった。何もわからなかったが、保健体育科の教員が中心で養護教諭が実務を担当して運営されていることはわかった。17年後に教頭になってから知ることになるのだが、保健主事が各学校に置かれていて、たいがいは保健体育の教員が任命されているのである。このことは法で決められている。しかし初めての私には何もかもが不思議だった。
 当面の課題は、ゴールデンウィークの合間の平日に実施される体力測定と健康診断であったが、長年蓄積されてきたノウハウがあり教員たちは慣れたものである。私が担当したのは体育館で実施される握力測定であった。マニュアルどおり生徒たちに実施させて、生徒たちに記録させていく。大きなトラブルはなくスムーズに進行した。生徒たちは約10人単位の班で行動する仕組みで、新入生の班は要領がわからずウロウロするが3年生は混む測定種目を心得ていて要領よくたち舞う。
 健康診断の実施にあたっては内科、歯科、眼科等の学校医との調整が大変そうだった。応援の医師も動員されてくるが、ベテランの養護教諭がうまく対応していた。
 ゴールデンウィークが過ぎた頃になると周囲の教員は私に「採用試験に合格したら幾らでも仕事があるから、まずは採用試験に合格してくれ」と言って、負担のかかる仕事をさせようとはしなくなった。しかし勤務時間内に採用試験の受験勉強はなかなかできないものであり、定時での退勤(当時は17時10分)を強く勧められた。
 夏の採用試験が終わり2学期になると、体育祭の準備が始まるのだが不思議なことになぜか保健部が体育祭の応援団指導をすることになっていた。勤務校では3学科が設置されていたので各学科の応援団が構成される。そのうちの一つを担当することになった。しかし、各学級から選出されてきた応援団員は放課後なのになかなか集まらない。各学級担任にお願いするが状況は変わらないまま時間だけが過ぎていく。しかし体育祭まであと10日となった時点で、応援団の3年生の顔色が変わってきたのである。少しずつリーダーシップを発揮し始めた3年生たち。私は彼らを教えていたのでよく知っていたが介入せず見守った・・・。結果、体育祭の2日前には応援団としての体裁が整った。下級生を短時間にまとめ上げた3年生たちの強いリーダーシップ。教師ではできない手法によるリーダーシップの発揮に、これが“創立60年の勤務校の伝統”なのか・・・とつくづく思ったのである。

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