通信制高校の魅力

富永 誠

更新日:2025年9月1日

 大阪府は、2040年までに32の府立高校を閉校させることを発表した。少子化による志願者数の減少などが主な理由である。大阪府では、府立高校の再編整備に関する条例を定めていて、2012年以降志願者が募集定員を3年連続で下回っているなどの理由で計12校を閉校し、9校で募集を停止した。人気のある高校とそうでない高校とで明暗がくっきりと分かれている。少子化はもちろん最大の原因であるが、他にも私立高校の授業料無償化がある。大阪府は全国に先駆けて導入したが、その結果多くの生徒が施設・設備の充実している私立高校に流れた。

 そして、通信制高校の躍進である。文部科学省の学校基本調査(令和6年度)によると、通信制高校に通う生徒数は約29万人と、高校生の11人に1人が通信制高校に通っている。通信制高校の生徒を支援する「サポート校」への新規参入も激増し、また塾や予備校が通信制高校を併置するケースも相次いでおり、少子化の中でも生徒の奪い合いが激しさを増している。これに拍車をかけたのがコロナ禍である。オンライン授業の導入が進み、毎日学校に通わなくても高校卒業資格を取得する方法が広く知られるようになり、通信制を選んでいる生徒が増えている。

 筆者は大学の広報活動のため全日制だけでなく通信制の高校も多く訪問しているが、ある高校では生徒数が開校1年目5人、2年目70人、3年目150人と大変なスピードで増加した。そこで見る生徒たちは、自分の知っている通信制の生徒たちとはイメージが全く違う。一昔前は不登校傾向のある生徒や全日制でなじめなかった生徒が転学するというものであったが、現在では通信制で学びたいというしっかりとした意思を持って入学する生徒が増えてきている。

 カリキュラムやコースが豊富に用意されていて、自分のペースで勉強し、空いた時間で興味関心のあることに没頭したり、部活動やアルバイトをしたりと充実した学校生活を送っているのである。

 そんな甘やかした教育をしていて大丈夫なのかという声も多い。しかし、今の時代にマッチした教育方法であるのかもしれない。全日制の高校でこれまで頭髪服装指導や遅刻指導に費やしてきた労力と時間を、生徒の学習保障や信頼関係の構築に使うことができるのは大きなメリットであるといえよう。この傾向を教育関係者は注意深く見守っていく必要がある。

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